イーヴォ・ポゴレリチ ピアノ・リサイタル

1/12 7PM サントリーホール

アンコール

ピアノ:イーヴォ・ポゴレリチ

変更前のプログラムは私の好きな曲だけで構成された最高のものだったのだが、スクリャービンの幻想ソナタグラナドスに変更され、更になぜかエリーゼのためにが加わった。多少残念ではあるけど、何と云っても演奏者はあのポゴレリチである。普通の演奏を期待してはいけない。好きな曲なら尚更だ。と云う訳で覚悟して行った。
まずベートーヴェンの最後のピアノソナタ。これに関しては、特に終楽章は遅いテンポが個人的にも好みであるので、あまり心配はしていなかった。しかーし、相手はあのポゴレリチ。甘かった。
遅い! つーか異様。楽譜に書かれている情報のうち、音の高さと縦の線だけを守り、テンポや音価、その他の演奏記号をほとんど無視しているとでも云えばいいのだろうか。ていうかここまでやっちゃうと、著作権の切れてない作品を演奏した時、著作物の同一性保持権とかどうなるんだ、なんて場違いなことまで考えてしまった。さらに、遅すぎるテンポのため自分がどこを弾いているのかわからなくなってしまうから譜めくりを置いているのじゃないか、なんて。
続いて「エリーゼのために」。これは次の「テレーゼ」へのプレリュードとして置いたのかな。「エリーゼのために」は実は「テレーゼのために」だったらしいし*1。これはテンポに関してはまあまともだった。勿論独自すぎるアクセントとかはあったけど。
次の「テレーゼ」も好きな曲なんだけど、これもまったく別の曲。すべての曲に云えることだけど、遅いテンポと独自すぎるアクセントでメロディはほとんど聴追えない。これはもう前衛芸術だ。ばんざーい。
後半はグラナドスの「アンダルーサ」から。当然「スペイン」でも「舞曲」でもない。続く「超絶」と「イスラメイ」と云うある種の人々にとっては胸躍るプログラム。これだけは遅いテンポでやられたら流石に堪らないなと思ってたけど、きちんと快速で飛ばしてくれた。相変わらず限界を超えて独特な解釈だけど、やはり技術は一流。「イスラメイ」で少々怪しい部分があったけど、彼ももう50近くだから、技巧的には下り坂なのも仕方がない。まあでも、まったく全然一分たりとも技巧で売るピアニストではない訳だし。
語り草になっている一昨年の来日公演は聴けなかったため、是非(怖いもの聴きたさで)行きたかったこの公演だったんだけど、その欲求は充分すぎるほど満たされました。月曜日もある意味楽しみだ、特にショパン

*1:でもWikipediaによると同じテレーゼでも別人らしい