西村賢太『二度はゆけぬ町の地図』読了

二度はゆけぬ町の地図

二度はゆけぬ町の地図

四篇収録。うち二篇はなぜか今までと違い、主人公が北町貫多なる人物になっている。ちょっと毛色の違う『野性時代』に載った小説だからだろうか。だからと云って何かが変わったようにも見えないけど。名前も適当だし。私としては、連載を読んでいる感覚でこの人の人生を読んでいるので*1、できれば名前は変えてほしくなかったが、瑣末なことではある。
時間軸的にはかなり遡って、まだ藤澤芿造に出会う前の話なので、いつものダメオタクっぷりは読むことができない。更に、まだ若いからか、後年のホントにどうしようもない感じではなく、応援したくなるようなところも僅かながら見せる。
「春は青いバスに乗って」と云うタイトルがいいなあ。非常に爽やかと見せかけて、青いバスとは留置者が載せられる護送バス。「腋臭風呂」もすげータイトルだ。

*1:ノンフィクション感覚だ