山田悠介『リアル鬼ごっこ』(amazonへのリンク)結構前に読了。

これだけ前評判と自分の意見が一致する作品も珍しい。ていうか、これ結局自費出版だったんですか?だったら真面目に貶すのもアレなんだが…。
まあとにかく文章。この文章はすごい。大袈裟でもなんでもなく。一部の語彙と漢字を除けば小学生が書いたと云っても普通に信じます。本当に小学生が書いたんなら、こんなに長いお話を、一応破綻することなく、よく最後まで書き上げたねえと誉めるけど。
この文章のとてつもないところは表現したい場面や展開というか、作者の頭の中が、物凄くよく見えてしまうところだ。なんか痛々しいほど。書いてるときの心境までわかっちゃうんじゃないかというくらい。文章そのものからは何も伝わらないから、「ああ、こういうことを表したいんだな」とどうしても想像せざるをえなくなるのだ。お前の考えていることなんかわかりたくねーんだよ!と叫んで、必死で逃げようとしても、山田悠介の思考が追いかけてくる。読んでいる間中山田悠介の影は消えることはない。これは結構恐い。そう、本書は作者と読者のリアル鬼ごっこだったのだ。