近藤健児『クラシックCD異稿・編曲のたのしみ』読了。

まさに待ってましたと云うような一冊。はっきり云って普通のクラシック愛好家には必要のない本だとは思うが。

クラシックCD異稿・編曲のたのしみ

クラシックCD異稿・編曲のたのしみ

クラシックの入門を済ませた後には2つの楽しみ方があると著者は云う。第1は、特定の曲・演奏家に特化した楽しみ方。これは、一番オーソドックスな楽しみ方で、普通にクラシックファンと云う場合、この楽しみ方を指すことが多いと思う。また、どんなにマニアックな人でもこの第1の楽しみを知らない、あるいはやらない人はほとんどいないと思われる。
そして第2が、有名作曲家の無名曲・無名作曲家の曲を探索する楽しみ方。これは第1に比べるとマニアックで、この道を行く人は数の上では大幅に減る。この道は正直打率は低い。無名であるのには無名であるだけの理由がある、つまり酷い曲も多い訳だ。しかしだからこそ当たりを引き当てたときの喜びは大きい。
そして、この本で語られるのが、第3の道、異稿・異版・編曲の楽しみである。大雑把に云えば、異稿・異版とは楽譜の差異を楽しむ、編曲は楽器の差異を楽しむと云うことになるだろうか。
この巻で紹介されているのは、モーツァルトベートーヴェンシューベルトメンデルスゾーンシューマンブルックナーブラームスチャイコフスキードヴォルザークの9人。個人的にはストライクゾーンど真ん中と云う訳でもない顔ぶれだが、データベースとして非常に有用。常に手元に置いて、ことあるごとに参照することになると思う。
残念なのは、一覧性に欠けること。滅茶苦茶大変だとは思うが、索引があれば……。