福永信『アクロバット前夜』読了。

アクロバット前夜

アクロバット前夜

大森望曰く「世界一高速でページをめくれる小説本(笑)」*1ww
確かにページめくるのに忙しすぎる。これは是非見せびらかしながら読みたい! と思って電車の中で読んでみたものの、特にジロジロ見られるなんてことはなかった。みんな他人が何読んでるかなんて興味ないのね。
それはさておき、とにかく数秒おきにページをめくんなきゃならないので、読んでても最初は全然頭に入らなかった。これは重大な欠陥商品じゃないのか、なんて責任転嫁をしたりもしたが、これは自分の普段の読み方が悪いんだろうと気付いた。普段の僕は結構流し読みをしがちなんだよなあ。さらーっと読んでしまって、ちょっと引っ掛かったり文意が分からなくなったりしたら、2,3行戻る、なんて小説に対して非常に失礼な読み方を反省した方がいいかも。
この本に対してはそれは通じない。なにしろ、話が分からなくなってしまったら、もう戻るのはほとんど不可能なのである。とにかく真剣勝負、この文章とは一期一会だと肝に銘じて読まなければならない。その意味で小説を不可逆な時間芸術に仕立て上げた傑作とも云えるかも。云えないかも*2
てな訳で、しっかり意味を噛み締めながら読むようにした。ら、中身も素晴らしかった。「五郎の五年間」と「三か所の二人」が特に好き。

*1:文学賞メッタ斬り!リターンズ』p.184

*2:初出は普通の組み方だったらしいし