イーヴォ・ポゴレリチ ピアノ・リサイタル

1/15 7PM サントリーホール

アンコール

ピアノ:イーヴォ・ポゴレリチ

いやもう、ラフマニノフバラバラ殺人事件だ。例えがまずけりゃ、マグロ解体ショーだ(良くなってないって)。
後半の楽興の時が凄かった。特に元々ゆったりめの第1,3,5曲が、もう蝿がとまるんじゃないかと云う遅さ。楽譜の音符をそれぞれ切り取って、時間軸に沿って任意の場所に置きましたよ的な演奏とでも云えばいいのか。ポゴレリチの頭の中では時間の経過が完全に伸び縮みしてるって。
前半のショパン、特に第3楽章の葬送行進曲は普通の意味で好演だったんだけどなあ。
ブラームスも遅かったし、アンコールのノクターンもおっそい。今日は超ノロノロスピードの日なのか、と思ってたけど、最後にまたイスラメイ弾いてくれました。もう9時半過ぎてたと思うし、ちょっとびびった。ただ、あんなノロノロ運転を続けた後の爆走は無茶っぽかった。疲れきってたのか、当たってなかったぞ。でもエキサイティングっちゃ、エキサイティングではあったけど。
今回の来日は2回とも聴きに云った訳だけど、これほどの演奏に対しては、こう云う解釈もありだ、なんてお茶を濁してはいけないだろうなあ。全肯定か全否定かだ。
じゃあお前はどうなんだと云われると、解釈と云う言葉の定義から云えばありと云わざるをえないけど、心情的にはあれをショパンだとかラフマニノフとは云って欲しくないかなと云う気はする(お茶濁してるじゃん)。
ただ、僕はピアノの音自体が大好きで、内容なんてまったくないとか云われがちなショーピース的な作品や、シフラみたいな魅せることだけを考えた演奏なんてのがまさに好みでもある訳だし、単純にピアノの音を聴いて楽しいと思わせるポゴレリチの演奏は好きだし、また来日したら聴きに行くだろうなとは思う。
とりあえずこれだけオンリーワンのことをやって、理解できない方が悪いと云う空気を作ってしまったポゴレリチは凄い。無名の新人がこれやったって、絶対に認められないだろうし。
でも、いつか、「すいません、これまでやってきたことは全部出鱈目です。こんな私を褒めてくれた、評論家・聴衆の皆さん、ご苦労様でした。わはは」なんてことを云い出さないかな(ありえない)。