阿部和重『シンセミア(上・下)』読了。

シンセミア(上)

シンセミア(上)

シンセミア(下)

シンセミア(下)

暴力とかドラッグとか窃視とかそんなのに満ち溢れた物語。長い。が、その長さをぐいぐい読ませる力は充分にありました。サクサク進むのではなくて、へとへとになりながらようやくゴールに辿り着く感じ。それは充実感を伴いつつでもあるんだけど。
そしてこの長大な物語は、下巻30頁の

結局のところ、例外なく、誰も彼もが最低なのだ。

と云うことに尽きてしまう。博徳と和歌子が打ち解ける場面なんかは多少救いっぽいが、2人ともコカイン漬になっちゃったりする。
ラストの強引なまとめに入ったあたりが不満と云えば不満です。でも神町と云う土地を描く場合本当はそこに終わりはない訳で、必ず終わらせなければならない小説と云う表現形式は難しいんだなあと思ったり。